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現場職の採用単価はなぜ下がらない?内訳の分解と削減の優先順位を解説

堂下 直輝
この記事の監修者|堂下 直輝
公開日:2026年09月23日
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現場職の採用単価はなぜ下がらない?内訳の分解と削減の優先順位を解説

求人媒体を減らした。人材紹介をやめた。それでも1人採るのにかかる金額が変わらない。現場職の採用単価には、こうした「削ったのに下がらない」が起きやすい構造があります。

原因の多くは、採用単価を1人あたりの総額としてしか見ていないことにあります。総額は結果であって、そこには何を直せばいいかという情報が含まれていません。

この記事では、採用単価の計算方法を確認したうえで、建設・運送・製造といった現場職の採用が構造的に高くつく理由を公的統計から示し、費用を4つの区間に分解して、どこから手を付けるべきかの優先順位までを解説します。

採用単価が下がらないのは「1人あたり」で見ているから

まず、一般的な採用単価の定義を確認します。

採用単価の計算式

採用単価は、採用活動にかかった費用の合計を採用人数で割ったものです。

費用は外部コストと内部コストに分かれます。外部コストは求人媒体への出稿費、人材紹介の成功報酬、採用サイトの制作費、説明会の会場費など、社外に支払うお金です。内部コストは採用担当者の人件費、面接を担当する現場社員の工数、応募者への交通費支給など、社内で発生する費用です。

年間300万円かけて5人採用したなら、採用単価は60万円。計算自体は簡単です。

この数字からは「どこが高いのか」が出てこない

問題は、この60万円という数字を見ても、次に何をすればいいかが決まらないことです。

出稿を減らすべきなのか。応募は十分あるのに面接まで来ていないのか。面接までは来ているが辞退されているのか。どれであっても採用単価は60万円と出ます。原因が違うのに同じ数字になるので、打ち手が選べません。

実際によくあるのは、単価の高い手法をやめるという判断です。人材紹介を止める、有料媒体を止める。すると当然コストは下がりますが、採用人数も一緒に減ります。割り算の分母と分子が両方減るので、採用単価はほとんど動きません。これが「削ったのに下がらない」の正体です。

内部コストを入れていない会社が多い

もう1つ、現場職の採用でよく漏れるのが内部コストです。

応募者への電話を1件かけるのに5分。面接を1件実施するのに、現場から人を呼び戻す移動時間を含めて2時間。これを月に何十件も回していれば、外部に払っている金額と同等かそれ以上の費用が社内で発生しています。

内部コストを計算に入れていないと、「無料媒体だからタダ」という誤解が生まれます。無料媒体で応募が100件来て、そのうち連絡がつくのが20件なら、80件分の電話工数はそのまま損失です。単価を正しく比べるには、社内で使った時間も金額に換算する必要があります。

内部コストの出し方

厳密である必要はありません。継続して同じ基準で積み上げられることのほうが重要です。次の3つを決めるだけで実用に足ります。

第1に、採用担当者の時間単価。年収を年間労働時間で割った概算で構いません。年収480万円なら、社会保険料の会社負担を含めて時間あたり3,500円前後になります。

第2に、業務ごとの標準時間。応募者への初回連絡1件で10分、日程調整の往復で15分、面接1件で現場責任者を含めて2時間、といった目安を決めます。

第3に、面接に同席する現場社員の時間単価。ここを忘れると、現場職の採用では実態の半分程度しか計上できません。現場から呼び戻す移動時間も含めてください。

この3つを掛け合わせると、月の内部コストが出ます。応募40件・面接8件の会社なら、初回連絡に約7時間、日程調整に約10時間、面接に16時間で、合計33時間。時間単価3,500円で換算すると11万円を超えます。面接に現場社員が同席していれば、さらに積み上がります。外部に払っている出稿費と同じ桁です。

費目区分計上の考え方
求人媒体の出稿費外部掲載期間で按分する
人材紹介の成功報酬外部入社月に計上する
採用サイト・動画の制作費外部複数年で按分する
採用担当者の人件費内部時間単価×業務時間
面接同席者の人件費内部時間単価×(面接時間+移動時間)
応募者への交通費・宿泊費外部都度計上する

数字で見る|現場職の採用が構造的に高くつく理由

現場職の採用単価が下がりにくいのは、担当者の努力不足ではなく市場の構造によるものです。公的統計で3つ確認します。

新規求人10件のうち、その月に埋まるのは1件に満たない

厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)」第2表(常用・パートタイムを除く・全国計)によると、令和8年7月の新規求人数は487,600人、就職件数は41,437件でした。新規求人に対する就職件数の割合である充足率は8.5%です。

正社員に限ると、新規求人411,725人に対して就職件数33,950件で、充足率は8.2%にとどまります。

求人を出すこと自体は、もはや採用の手段として成立していません。10件出して1件埋まらないのが標準的な状態です。出稿量を増やす発想でこの数字に対抗しようとすると、費用だけが線形に増えていきます。

ハローワークの新規求人の3分の1が現場系3業種

次に、どの業種が求人を出しているかを見ます。同じ統計の第3表-3(産業別一般新規求人状況・新規学卒者及びパートタイムを除く・令和8年7月)の数値です。

産業新規求人数前年同月比
合計487,600人-0.1%
建設業68,094人1.4%
製造業60,143人5.8%
運輸業,郵便業37,419人0.9%
医療,福祉116,785人1.0%
卸売業,小売業50,948人-6.6%
宿泊業,飲食サービス業19,097人-8.9%

建設業・製造業・運輸業の3業種を合わせると165,656人。全体487,600人の34.0%を占めます(当社算出)。

しかも卸売・小売や宿泊・飲食が前年割れしているのに対し、この3業種はいずれも前年を上回っています。求人が減る業種がある一方で、現場系は出続けている。同じ求職者を取り合う相手が多いということです。

母集団形成の単価は、この競合の密度で決まります。現場職の応募単価が高いのは、媒体の値段が高いからではなく、同じ枠を奪い合う求人が多いからです。

会えれば決まる。だから単価は「会う前」で決まる

3つ目に、選考に入ってからの決定率を見ます。厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年6月分)」参考統計表8-1(常用・パートを除く・全国計)の紹介件数と就職件数から、紹介後に就職へ至った割合を算出しました。

職業紹介件数就職件数紹介後に就職に至った割合
職業計184,735件42,929件23.2%
一般事務従事者51,579件6,983件13.5%
生産工程従事者22,476件6,786件30.2%
自動車運転従事者7,562件3,154件41.7%
建設躯体工事従事者501件239件47.7%
土木作業従事者1,607件805件50.1%

土木作業従事者は50.1%、建設躯体工事従事者は47.7%。紹介された2人に1人が就職まで至っています。一般事務従事者の13.5%と比べると3.7倍です。

ここから読み取れることははっきりしています。現場職の採用費用は、候補者と会ったあとではほとんど積み上がりません。会うまでの区間に集中しています。つまり採用単価を下げる余地も、そのほとんどが会う前にあるということです。

採用単価を4つの区間に分解する

総額ではなく区間ごとの単価を出します。ここが実務の中心です。

4つの区間

採用に至るまでを、次の4つに区切ります。

第1区間は掲載から応募まで。媒体費や広告費を、その媒体から来た応募数で割ります。これが応募単価です。

第2区間は応募から連絡到達まで。応募者のうち、実際に連絡がついた人の割合です。ここで費用は発生しませんが、落ちた分だけ応募単価が無駄になります。

第3区間は連絡到達から面接実施まで。日程調整に入った人のうち、実際に面接の席に着いた人の割合です。

第4区間は面接実施から入社まで。内定承諾と入社に至った割合です。

区間ごとに出すと「どこが高いのか」が見える

具体例で計算します。ある会社が月30万円を1つの媒体に出稿し、次のような結果になったとします。

区間件数通過率この時点での1件あたり費用
応募40件ー7,500円
連絡がついた20件50.0%15,000円
面接を実施した8件40.0%37,500円
入社した2人25.0%150,000円

採用単価は15万円です。総額だけを見ていると「15万円は高いか安いか」という話で終わります。

しかし区間で見ると、応募から連絡がつくまでで半分、連絡から面接までで6割が落ちています。40件の応募が8件の面接にしかなっていません。この会社が出稿を倍にすれば応募は80件になりますが、通過率が同じなら面接は16件、入社は4人。費用も倍かかるので採用単価は15万円のまま動きません。

一方、連絡到達率を50%から80%に上げるだけで、同じ出稿30万円で面接は12〜13件、入社は3人になります。採用単価は10万円です。かかる費用は増えていません。

通過率は出稿量では動かない

ここが重要な点です。第1区間の応募単価は市場で決まるので、自社の努力で大きく動かせる部分は限られます。媒体の選定や原稿の改善で2〜3割は変わりますが、桁は変わりません。

これに対して第2区間から第4区間の通過率は、運用の設計で2倍以上動くことがあります。しかも費用はほとんどかかりません。採用単価を下げる順番として、先に手を付けるべきなのは明らかに後者です。

手法別に費用構造がどう違うか

区間の話と合わせて、手法ごとの性質も押さえておきます。同じ「採用にかかるお金」でも、増え方がまったく違います。

費用が人数に比例するもの、しないもの

手法費用の発生の仕方採用人数が増えたとき止めたとき
求人媒体(掲載課金)期間に対して固定単価は下がる応募が止まる
求人媒体(応募課金)応募数に比例単価は変わらない応募が止まる
人材紹介入社1人ごとに発生単価は変わらない費用も止まる
自社の発信初期と運用に固定単価は下がるしばらく残る
社員紹介1人ごとの謝礼単価は変わらない費用も止まる

採用人数が増えたときに単価が下がるのは、掲載課金の媒体と自社の発信だけです。継続的に複数名を採る職種ほど、この2つの比率を上げたほうが単価は下がります。

逆に、年に1人だけ採る専門職で自社の発信に投資しても、固定費を1人で負担することになり単価は上がります。職種ごとに採用人数の見込みを置いてから手法を選んでください。

業種によって難易度が違う

同じ現場職でも、母集団形成の難しさには差があります。前述の求人倍率で言えば、建設躯体工事従事者の8.55倍と生産工程従事者の1.72倍では、同じ施策でも得られる応募数が違います。

採用単価の目標値を全社一律で置くと、難易度の高い職種の担当者だけが達成できない状態になります。職種ごとに過去の実績から目標を置いてください。

どの区間から手を付けるか

区間ごとの数字が出たら、優先順位は機械的に決まります。

通過率が最も低い区間から

自社の4つの通過率を並べて、最も低いところから直します。感覚ではなく数字で選んでください。

現場職の採用では、第2区間の連絡到達率が最初のボトルネックになっていることが多くあります。日中に現場で働いている候補者は、勤務時間中の電話に出られません。電話だけで追いかけている限り、この区間の損失は減りません。

第3区間で落ちている場合は、日程の設計に原因があります。応募から面接日までの間隔が長いほど、他社の選考が先に進みます。応募が生まれる確率が10件に1件に満たない市場で、せっかく得た1件を待たせるのは費用の使い方として合いません。

応募後の連絡と日程設計については、応募者が面接に来ない原因で詳しく解説しています。

単価の高い手法を止める前に、無料の区間を直す

人材紹介や有料媒体は単価が高く見えるため、削減の対象になりやすい項目です。しかし前述のとおり、分母と分子が同時に減るので採用単価は下がりません。

先に手を付けるべきは、費用がかかっていない第2区間から第4区間です。ここを直せば、同じ出稿費でより多くの人が入社します。分母を変えずに分子だけが増えるので、採用単価は確実に下がります。

人材紹介は使いどころで判断する

人材紹介そのものが悪いわけではありません。判断基準は、その職種の充足率と、自社が母集団を持っているかどうかです。

急ぎで1人だけ必要な専門職なら、成功報酬型は合理的な選択です。一方、毎年継続的に複数名を採る職種で人材紹介に依存すると、採用人数に比例して費用が増え続けます。この場合は、自社で母集団を作る投資に切り替えたほうが、数年単位では単価が下がります。

採用単価を下げている会社に共通すること

実際に単価が下がっている会社の取り組みには、いくつか共通点があります。

自社で母集団を持っている

媒体に出稿して応募を買う形は、出稿を止めた瞬間に応募がゼロになります。毎月同じ費用がかかり続け、蓄積しません。

これに対し、自社の発信を通じて応募が来る状態を作ると、初期の手間はかかりますが継続的な出稿費は減ります。現場職の採用では、動画で仕事内容や職場の雰囲気を伝える手法が有効です。建設業のSNS採用、運送会社のSNS活用、製造業のSNS運用でそれぞれ業種別に解説しています。

応募から連絡までの時間を記録している

改善した会社は例外なく、この時間を計測しています。平均何時間で初回連絡ができているか。24時間以内に連絡できた割合は何%か。

記録していない会社は、遅いことにも気付けません。まず記録から始めるだけで、多くの場合は数字が改善します。

固定費と変動費を分けている

採用サイトの制作費や動画の撮影費は、1人採るごとにかかる費用ではありません。一方、成功報酬や応募課金は採用人数に比例します。

この2つを混ぜて総額を人数で割ると、初期投資をした年の採用単価だけが跳ね上がり、判断を誤ります。固定費は複数年で按分し、変動費は都度計上する形にすると、実態に近い数字になります。

現場職の採用単価に関するよくある質問

採用単価の目安はいくらですか

業種、職種、地域、採用手法によって大きく変わるため、他社の平均値と比べてもほとんど意味がありません。自社の過去の数字と比べてください。同じ職種で前年よりも下がっているかどうかが、唯一意味のある比較です。

内部コストはどう計算すればいいですか

担当者の時給に、その業務にかけた時間を掛けるだけで十分です。厳密さより継続性が大切なので、面接1件あたり2時間といった概算を決めて、毎回同じ基準で積み上げてください。

応募は多いのに採用できません

第2区間から第4区間のどこかで落ちています。まず4つの通過率を出してください。応募数を増やす施策を打つ前に、この数字を確認することで無駄な出稿を避けられます。

媒体を1つに絞ったほうが安くなりますか

絞ることで管理工数は減りますが、応募単価が下がるとは限りません。媒体ごとに応募単価と入社までの通過率を出し、最終的な採用単価が低いものを残してください。応募数が多い媒体が、採用単価も低いとは限りません。

採用単価と採用コストは違うものですか

採用コストは活動にかかった費用の総額、採用単価はそれを採用人数で割った1人あたりの金額を指すのが一般的です。社内で用語の定義を揃えておくと、報告の行き違いを防げます。

採用できなかった月の費用はどう扱いますか

その月だけで割ると数字が無限大になるため、四半期または年間で集計してください。現場職の採用は月ごとの変動が大きく、単月の採用単価にはほとんど意味がありません。

退職してしまった人の採用費用は計算に入れますか

採用単価の計算には入れたうえで、別途「1年後在籍率」を並べて見てください。単価だけを下げると、早期に辞める採用が増えても数字の上では改善したように見えてしまいます。

紹介会社の手数料を下げる交渉は有効ですか

一定の効果はありますが、下げられる幅には限りがあります。それよりも、同じ職種を人材紹介以外の経路でも採れる状態を作るほうが、長期的には費用が下がります。

まとめ

現場職の採用単価が下がりにくいのは、市場の構造によるものです。新規求人の充足率は8.5%、建設・製造・運輸の3業種だけで新規求人全体の34.0%を占めます。母集団を作る費用は、この競合の密度で決まります。

一方で、紹介後に就職へ至る割合は土木作業従事者で50.1%、建設躯体工事従事者で47.7%。会えれば決まるということは、費用も改善余地も会う前の区間に集中しているということです。

やるべきことは、総額を人数で割るのをやめて、応募・連絡到達・面接実施・入社の4区間に分解し、通過率が最も低い区間から直すことです。出稿を増やしても通過率は動きません。逆に通過率が動けば、費用を増やさずに採用単価は下がります。

実際に採用につながった事例は導入実績にまとめています。

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堂下 直輝

この記事の監修者|堂下 直輝

1994年、兵庫県生まれ。大学卒業後、株式会社マイナビに入社し、支社立ち上げから課長職までを経験。累計500社以上の採用支援に携わる。

2020年、株式会社アップデートを設立し、代表取締役に就任。「仕組みを変え、世界中の課題を解決し続ける」をミッションに掲げ、建設業・運送業・製造業を中心に採用支援事業を展開。
ショート動画やSNSを活用した採用支援を強みに、200を超えるアカウントの運用を支援。採用支援に関する講演活動も積極的に行い、実務と発信の両面から企業の採用課題解決に取り組んでいる。

現在はメガバンクなど金融機関とも提携し、大阪・東京・福岡を拠点に、全国の企業を支援している。

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