求人のSNS広告の始め方|Meta・TikTok広告の費用の考え方と、求人だから守るべき法律のルール
求人サイトに掲載しても応募が集まらない。そんなときの選択肢として、InstagramやTikTokなどのSNSに求人の広告を出す会社が増えています。
SNS広告は、届けたい地域や年代の人に絞って届けられる、転職を考えていない人の目にも触れる、動画で職場の空気を伝えられるといった強みがあります。一方で、求人の広告には商品の広告とは違う法律のルールがあり、広告の設定画面はそれを教えてくれません。
この記事では、求人のSNS広告の強みと媒体の選び方、始めるための5つの手順、費用の考え方を解説したうえで、職業安定法をはじめとする求人ならではのルールを、広告文の書き方の例とあわせて整理します。
求人のSNS広告とは|求人媒体との違い
求人のSNS広告とは、Instagram、Facebook、TikTok、YouTube、LINEなどのSNSに、求人や職場の様子を伝える広告を出すことです。
求人サイトとの一番の違いは、求職者との出会い方にあります。
| 項目 | 求人サイト | SNS広告 |
|---|---|---|
| 出会い方 | 仕事を探している人が検索して見つける | 普段SNSを見ている人の画面に表示される |
| 届く相手 | 今まさに転職を考えている人 | 転職を考えていない人も含む |
| 伝えられること | 決まった書式の文字と写真 | 動画で職場の空気や働く人の様子 |
| 他社との比べられ方 | 同じ画面に多くの求人が並ぶ | 1社の広告として表示される |
| 費用の決まり方 | 掲載期間や応募数に応じた料金 | 配信した量に応じた広告費 |
求人サイトは、今まさに仕事を探している人に強い手段です。ただ、現場職のように応募者の取り合いになっている職種では、同じ画面に並ぶ多くの求人の中で埋もれやすくなります。求人サイトで応募が来ないときに見直す順番は、Indeedに掲載しても応募が来ない原因の記事で解説しています。
SNS広告は、そうした比べられ方をする前の段階で、まだ転職を考えていない人に会社を知ってもらえる点が強みです。
求人のSNS広告の強み
SNS広告には、求人サイトにはない強みが3つあります。
届けたい層に絞って届けられる
MetaやTikTokの広告では、配信する地域や年代、性別、興味や関心などを指定して届けられます。通勤できる範囲に住んでいる人だけに配信する、若手を増やしたいときに若い年代に厚めに配信する、といった使い方ができます。
求人サイトでは、誰が見るかを会社が選ぶことはできません。届けたい相手に絞って予算を使えるのは、SNS広告ならではの強みです。
ただし、配信の設定で相手を絞ることと、求人の内容で年齢や性別を限定することは別の話です。求人の内容は年齢や性別を問わない書き方にする必要があります。詳しくは後半の「求人だから守るべきルール」で解説します。
転職を考えていない人にも届く
SNSを見ている人の多くは、仕事を探すためにSNSを開いているわけではありません。今の職場に大きな不満はないものの、よい条件があれば考えたいという人にも、広告なら会社の存在を知ってもらえます。
現場職の採用では、同業他社で経験を積んだ人や、他の業種から転職を考え始めた人との接点を作ることが大切です。こうした人は求人サイトをこまめに見ていないことも多いため、SNS広告が有力な接点になります。
動画で職場の空気を伝えられる
求人票の文字だけでは、一緒に働く人の雰囲気や現場の様子は伝わりません。SNS広告では、働く人の表情や声、仕事の流れを動画で見せられます。
応募前に職場の様子を知ってもらえるため、入社後に「思っていた会社と違った」と感じる人を減らす効果も期待できます。採用に短い動画を使う考え方は、採用でショート動画は効果あるのかでまとめています。
媒体の選び方
どの媒体に広告を出すかは、届けたい相手がよく使っている媒体かどうかで決めます。総務省情報通信政策研究所「令和7年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」による年代別の利用率は次のとおりです。
| サービス | 10代 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| LINE | 96.4% | 97.7% | 97.9% | 96.6% | 95.6% | 92.0% |
| YouTube | 95.0% | 96.3% | 94.0% | 91.6% | 84.9% | 72.6% |
| 69.3% | 82.6% | 76.6% | 67.1% | 54.4% | 36.1% | |
| X | 56.4% | 73.4% | 67.7% | 57.0% | 40.2% | 24.8% |
| TikTok | 67.9% | 61.5% | 44.7% | 42.6% | 32.2% | 21.2% |
| 14.3% | 23.4% | 37.4% | 38.9% | 33.1% | 22.6% |
主な媒体の使いどころを整理すると、次のようになります。
| 媒体 | 特徴 | 求人での使いどころ |
|---|---|---|
| Meta広告(Instagram・Facebook) | 地域や年代などを細かく指定できる。1つの管理画面でInstagramとFacebookの両方に出せる | 通勤圏に絞った現場職の募集、20代〜40代の中途採用 |
| TikTok広告 | 通常の投稿と同じ形でおすすめ欄に表示される | 若い年代への認知、運用で反応が良かった動画の拡散 |
| YouTube広告 | 動画の前後や途中に表示される | 仕事内容を動画でじっくり伝えたいとき |
| LINE広告 | 幅広い年代に届く | 年代を問わず、地域の人に広く届けたいとき |
| X広告 | 話題や関心に合わせて表示される | 会社の取り組みや話題と合わせた発信 |
最初から複数の媒体に出す必要はありません。まずは届けたい年代の利用率が高い媒体を1つ選び、応募単価を確かめてから広げるのが安全です。
求人のSNS広告を始める5つの手順
手順1:目的と、判断に使う数字を決める
最初に、何人を、いつまでに採用したいのかを決めます。そのうえで、判断に使う数字を「1件の応募にいくらかかったか」に決めてください。
SNS広告の管理画面には、表示回数やクリック数などたくさんの数字が並びます。ただ、採用の目的に直接つながるのは応募の数と、その単価です。最初に判断の軸を決めておかないと、表示回数が多いことに安心して、応募が来ないまま予算を使い続けることになります。
手順2:広告から飛ぶ先を整える
広告を見て興味を持った人が、次に見るページを用意します。仕事内容、給与、勤務地、働く人の様子が分かる採用ページと、短い時間で送れる応募フォームです。
広告のリンク先が会社の一般的なトップページで、採用情報を探さなければならない状態では、せっかくの興味が応募につながりません。応募フォームは、名前と連絡先など最小限の項目で送れる形にしておくと、途中でやめる人が減ります。
このページは、後で解説する労働条件の明示の受け皿にもなります。広告の短い文章では伝えきれない条件を、ここで正確に示してください。
手順3:広告に使う素材を用意する
広告の素材は、写真よりも短い動画のほうが職場の様子を伝えやすくなります。すでに自社のSNSアカウントを運用している場合は、通常の投稿で反応が良かった動画を使うのが近道です。見た人の反応で、内容がすでに確かめられているためです。
アカウントを運用していても反応が伸びない場合は、広告に回す前に投稿の中身を見直す必要があります。見直し方は、建設会社のSNSが伸びない原因の記事で詳しく解説しています。
手順4:配信の設定をする
配信する地域、年代、興味や関心などを設定します。現場職の募集であれば、まずは通勤できる範囲の地域に絞るのが基本です。
年代や性別で配信先を絞ることもできますが、その場合も求人の内容は年齢や性別を問わない書き方にし、指定した層以外の人から応募があったときも同じ基準で選考してください。
手順5:続けるか止めるかの基準を決めておく
配信を始める前に、「応募単価がいくらを超えたら止める」「何日たっても応募が0件なら素材を替える」といった基準を決めておきます。
SNS広告は、配信を始めてからでも素材や設定を変えられるのが利点です。基準を決めておけば、成果の出ない広告に予算を使い続けることを防げます。
費用の考え方
求人のSNS広告の費用は、地域や職種、配信の設定、時期によって大きく変わります。一律の相場を当てはめて予算を決めると、判断を誤りやすくなります。
各社が公表している最低予算
事実として確認できるのは、各社が公表している最低予算です。TikTokは、キャンペーンの1日の予算を50米ドル以上、広告グループの1日の予算を20米ドル以上と定めています。Metaは、最低予算は国や目的などの条件によって変わるとしており、日本円での一律の金額は公表していません。予算が最低額を下回っている場合は、管理画面に表示されます。
なお、Instagramのアプリから投稿を宣伝する場合、iPhoneのアプリ内で支払うとAppleのサービス料がかかる場合があると案内されています。継続して広告を出すなら、パソコンの広告管理画面から出すほうが扱いやすくなります。
応募単価と採用単価で判断する
費用が適切かどうかは、1件の応募、そして1人の採用までにいくらかかったかで判断します。求人サイトや人材紹介にかかっている費用と同じ物差しで並べると、どこに予算をかけるべきかが見えてきます。
採用にかかる費用の分け方と、どこから削るべきかは、現場職の採用単価はなぜ下がらないのかで詳しく解説しています。
求人だから守るべきルール
求人の広告には、商品の広告とは違う法律のルールがあります。ここを押さえずに配信すると、会社の信用を損なうだけでなく、行政から指導を受けるおそれもあります。
媒体の仕組みは、日本の法律を確かめてくれない
MetaやTikTokには、求人の広告で年齢や性別などの指定を制限する仕組みがあります。ただ、その対象はMetaが米国・カナダ・ヨーロッパの一部、TikTokが米国とカナダで、日本向けの配信では年代や性別を指定して届けることができます。
一方で、両社とも差別的な広告そのものは地域を問わず禁じています。求人の内容が日本の法律に沿っているかどうかは、会社が自分で確かめる必要があります。
職業安定法|正確で最新の内容に保つ
厚生労働省は、インターネットやSNSを含む広告で労働者を募集するときは、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならないと周知しています。2022年10月の法改正で、求人の情報を正確で最新の内容に保つことも義務になりました。
SNS広告で特に注意したいのは、募集を終えた後も広告が配信され続けることです。採用が決まったら、その日のうちに配信を止め、採用ページも更新してください。いつ時点の情報かを示しておくことも、正確さを保つ方法として挙げられています。
また厚生労働省は、募集の広告に会社の名称、住所、連絡先、業務内容、就業場所、賃金を表示するよう求めています。
労働条件の明示|広告に書ききれないときの扱い
求人の広告を出すときは、仕事の内容や賃金、労働時間などの労働条件を明示する必要があります。2024年4月からは、明示する事項に「従事すべき業務の変更の範囲」「就業の場所の変更の範囲」「有期労働契約を更新する場合の基準」が加わりました。
SNS広告は文字数が限られるため、すべてを広告の中に書くのは現実的ではありません。厚生労働省は、広告のスペースが足りないなどやむを得ない場合は、「詳細は面談時にお伝えします」などと付けたうえで、一部の条件を別のタイミングで示すことも可能としています。ただしその場合も、原則として面接など求職者と最初に接触する時点までに、すべての条件を示す必要があります。
実務では、広告には要点だけを載せ、リンク先の採用ページで全ての条件を示す形にしておくと確実です。手順2で整えたページが、この受け皿になります。
年齢|「〇歳まで歓迎」は書かない
労働施策総合推進法により、募集と採用では、例外にあたる場合を除いて、年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければなりません。
厚生労働省のQ&Aでは、「年齢不問」と書いたうえで「35歳未満の方歓迎」と併記することも、法の趣旨に照らして適当ではないとされています。一方で、「スタッフ全員が20代」のように会社の事実を伝える表現は、直接には年齢制限にあたりません。ただし、若い人を優先して募集していると誤解されないように注意する必要があります。
性別|「男性スタッフ募集」は書かない
男女雇用機会均等法により、募集と採用では、性別にかかわりなく均等な機会を与えなければなりません。現場職の求人でよく見かける「男性スタッフ募集」「男性活躍中」のような、どちらかの性別を対象にした書き方はできません。
広告文の書き方の例
ここまでのルールを、広告文の例で整理します。
| 避けたい書き方 | 理由 | 書き換えの例 |
|---|---|---|
| 35歳未満の方歓迎 | 年齢による優遇にあたる | 未経験から資格の取得まで支援します |
| 男性スタッフ募集 | 性別を限定している | 現場スタッフ募集(〇〇の据え付け作業) |
| 月給40万円以上も可能(実際はごく一部) | 誤解を生じさせる表示にあたるおそれ | 月給28万〜40万円(経験・資格により決定) |
| 正社員募集(実際は契約社員から) | 雇用形態が事実と違う | 契約社員として採用し、半年後に正社員へ切り替え |
| 募集を終えた後も配信を続ける | 最新の内容に保つ義務に反する | 採用が決まった日に配信を止め、採用ページも更新 |
配信の設定をどこまで絞るかや、個別の表現に迷う場合は、社会保険労務士などの専門家に確認することをおすすめします。
通常の投稿と組み合わせる
SNS広告は、自社のアカウントでの通常の投稿と組み合わせると、より効果が出やすくなります。
広告で興味を持った人の多くは、応募する前に会社のアカウントを見に来ます。そのときに投稿がほとんどなかったり、何か月も止まっていたりすると、応募をためらう原因になります。
逆に、通常の投稿で反応が良かった動画は、広告の素材として使えます。TikTokには、通常の投稿をそのまま広告として配信できる「Spark Ads」という仕組みがあり、広告で得た再生数やいいね、フォローは元の投稿に加算されます。InstagramやFacebookでも、プロアカウントであれば投稿をそのまま宣伝できます。ただしMetaは、投稿の宣伝は広告管理画面から出す広告ほど細かい設定ができないと案内しています。配信先を細かく絞りたい場合は、広告管理画面から出してください。
求人のSNS広告に関するよくある質問
求人サイトはやめて、SNS広告だけにしてもよいですか
おすすめしません。求人サイトは今まさに仕事を探している人に、SNS広告はまだ転職を考えていない人に強い手段で、届く相手が違います。まずは併用し、それぞれの応募単価を比べてから配分を見直すのが現実的です。
少ない予算でも効果はありますか
少額からでも配信はできます。ただし予算が少ないほど、配信する地域を通勤できる範囲に絞り、通常の投稿で反応が確かめられた動画を使うことが重要になります。最初は少額で応募単価を確かめ、成果が見えてから予算を増やしてください。
年齢や性別で配信先を絞ってもよいですか
日本向けの配信では、設定上は年代や性別を指定できます。届けたい層に絞れるのはSNS広告の強みですが、求人の内容で年齢や性別を限定することは、例外にあたる場合を除き法律で禁じられています。広告文や採用ページは年齢や性別を問わない書き方にし、指定した層以外の人から応募があったときも同じ基準で選考してください。
応募は来るのに、面接に来ません
応募から面接までの対応に原因があることが多くあります。連絡までの時間や日程の出し方を見直すだけで、面接に来る人の割合は変わります。詳しくは、応募者が面接に来ない原因と対策で解説しています。
まとめ
求人のSNS広告は、届けたい地域や年代に絞って届けられる、転職を考えていない人にも届く、動画で職場の空気を伝えられるという点で、求人サイトとは違う強みを持っています。
始めるときは、判断に使う数字を応募単価に決め、広告から飛ぶ先の採用ページと応募フォームを整えてから配信してください。費用は相場ではなく、1件の応募と1人の採用にいくらかかったかで判断します。
そして、求人の広告には職業安定法による正確な表示と労働条件の明示、年齢や性別を限定しないといったルールがあります。媒体の仕組みはこれを確かめてくれないため、自社で確認する必要があります。
業種ごとの使い方は、建設業のSNS活用とSNS広告の記事でも解説しています。SNSと広告を活用して採用に成功した事例は、導入実績にまとめています。
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この記事の監修者|堂下 直輝
1994年、兵庫県生まれ。大学卒業後、株式会社マイナビに入社し、支社立ち上げから課長職までを経験。累計500社以上の採用支援に携わる。
2020年、株式会社アップデートを設立し、代表取締役に就任。「仕組みを変え、世界中の課題を解決し続ける」をミッションに掲げ、建設業・運送業・製造業を中心に採用支援事業を展開。
ショート動画やSNSを活用した採用支援を強みに、200を超えるアカウントの運用を支援。採用支援に関する講演活動も積極的に行い、実務と発信の両面から企業の採用課題解決に取り組んでいる。
現在はメガバンクなど金融機関とも提携し、大阪・東京・福岡を拠点に、全国の企業を支援している。