物流業界の人手不足の原因と対策|ドライバーと倉庫で違う不足の中身と2026年の法改正
「ドライバーが集まらない」「倉庫のスタッフが定着しない」。物流の現場では、人手不足がもう何年も続いています。2024年4月にはドライバーの時間外労働に上限が設けられ、2026年4月からは一定規模以上の荷主や物流事業者に、物流の効率化に向けた計画づくりが義務付けられました。
ただ、ひとくちに「物流の人手不足」と言っても、職種によって不足の度合いは大きく違います。最新の統計を見ると、ドライバーと倉庫・荷役の仕事では、求人倍率に2倍以上の差があります。
この記事では、物流業界の人手不足の現状を最新の公的統計で確認したうえで、人手不足が起きる5つの原因、2026年4月の法改正で何が変わったか、業界全体で取れる対策までを解説します。
物流業界の人手不足はいまどうなっているか(2026年8月の数字)
まずは数字で現状を確認します。ここで使う数値は、厚生労働省と国土交通省の公表資料に基づきます。
ドライバー2.54倍・倉庫や荷役1.06倍|同じ物流でも不足の度合いが違う
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年8月分)」によると、パートを含む常用の有効求人倍率は次のとおりです。
| 職業 | 有効求人倍率 | 前年同月差 |
|---|---|---|
| 職業計 | 1.06倍 | -0.03 |
| 自動車運転従事者(トラック・タクシー等のドライバー) | 2.54倍 | -0.05 |
| 運搬従事者(倉庫作業・荷役・配達など) | 1.06倍 | -0.04 |
ドライバーにあたる自動車運転従事者は2.54倍で、求職者1人に対して2.5件の求人がある状態です。一方、倉庫での入出庫やピッキング、荷物の積み下ろしなどを含む運搬従事者は1.06倍で、職業全体と同じ水準です。
つまり、物流の人手不足のうち最も深刻なのはドライバーです。倉庫や荷役の仕事は、数字の上では他の職業と同程度の採りにくさにとどまります。ただし、倍率が平均並みだからといって採用が楽というわけではありません。夜間や早朝のシフト、繁忙期の増員など、物流特有の条件に合う人を集めるのは別の難しさがあります。
運送会社とドライバーに絞った人手不足の構造は、運送業の人手不足の原因と対策で詳しく解説しています。
企業の実感は全産業で最も「人が足りない」
求人倍率は「ハローワークに出された求人と求職」の比率です。企業がどれだけ人手不足を感じているかは、別の統計で確かめられます。
厚生労働省「労働経済動向調査(令和8年8月)」では、正社員等の労働者が「不足」と答えた事業所の割合から「過剰」と答えた割合を引いた値(労働者過不足判断D.I.)を産業別に公表しています。2026年8月1日時点で、運輸業,郵便業は+61ポイントでした。調査産業計の+47ポイントを上回り、全産業のなかで最も高い値です。
ドライバーだけでなく、配車担当や倉庫の管理者、整備士なども含めて、物流の会社は「人が足りない」と感じている、ということです。
何もしなければ2030年度に輸送能力が34.1%不足する試算
国土交通省などが開いた「持続可能な物流の実現に向けた検討会」の最終取りまとめ(2023年8月)では、NX総合研究所の試算として、対策を取らなかった場合の輸送能力の不足が示されています。
・2024年度:14.2%(営業用トラックの輸送トン数で4.0億トン相当)
・2030年度:34.1%(同9.4億トン相当)
2030年度の数字は、ドライバー数の減少も加味したものです。何もしなければ、荷物の3分の1が運べなくなる可能性がある、という試算です。
物流業界で人手不足が起きる5つの原因
ここからは、人手不足を生んでいる原因を見ていきます。ドライバーに関わるものと、倉庫や荷役に関わるものがあります。
時間外労働の上限で、1人が運べる量が減った
2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働は年960時間が上限になりました。あわせて、拘束時間や休息期間のルールを定めた「改善基準告示」も見直されています。
| 項目 | 改正前(2024年3月まで) | 改正後(2024年4月から) |
|---|---|---|
| 1年の拘束時間 | 3,516時間以内 | 原則3,300時間以内(労使協定により3,400時間まで) |
| 1か月の拘束時間 | 293時間以内 | 原則284時間以内(労使協定により310時間まで・年6か月まで) |
| 1日の休息期間 | 継続8時間以上 | 継続11時間を基本とし、9時間を下回らない |
働きすぎを防ぐための大切な見直しですが、1人のドライバーが1年間に運べる量はそのぶん減ります。同じ量の荷物を運ぶには、より多くのドライバーが必要になります。これが「物流の2024年問題」と呼ばれるものです。
ドライバーの高齢化と、若い世代の入職の少なさ
ドライバーは年齢層の高い職業です。道路貨物運送業の就業者は50歳以上が過半数を占め、30代・40代の中堅層が10年前より大きく減っています。詳しい数字は50歳以上が過半数になった運送業の年齢構成で紹介しています。
ベテランが引退する一方で、若い世代の入職は増えていません。大型免許の取得に時間と費用がかかること、長時間労働のイメージが強いことなどが、若い世代を遠ざけています。人手不足はなぜ解消しないのか、と問われたときの答えの1つは、この年齢構成です。
EC拡大で小口・多頻度になり、倉庫の作業量が増えた
ネット通販の広がりで、物流は「大きな荷物をまとめて運ぶ」形から「小さな荷物を何度も届ける」形に変わってきました。
小口の荷物が増えると、倉庫では1件ごとのピッキング、検品、梱包の作業が増えます。配達先も増えるので、ドライバー1人あたりの配達件数や再配達の手間も増えます。荷物の総量が同じでも、必要な人手は増えていく構造です。
荷待ち・荷役など運転以外の時間が長い
ドライバーの拘束時間には、運転している時間だけでなく、荷主の倉庫で順番を待つ「荷待ち」や、荷物の積み下ろしをする「荷役」の時間も含まれます。
時間外労働に上限ができた今、荷待ちや荷役に時間を取られるほど、運転に使える時間は減ります。荷待ちの多くは荷主側の受け入れ体制で決まるため、運送会社だけでは減らしきれません。後で紹介する法改正で、荷主にも取り組みが求められるようになったのはこのためです。
仕事の中身が外から見えず、「きつい」印象が更新されない
物流の仕事には、今も「きつい・汚い・危険」という印象が残っています。実際には、オートマチック車の普及、フォークリフトや自動搬送機器の導入、休日の増加など、働く環境は変わってきています。
ところが、その変化は求人票の条件の欄からは伝わりません。どんな人が働き、どんな1日を過ごしているのかが外から見えないままだと、応募の候補に入りにくくなります。
2026年4月から何が変わったか|改正物流効率化法
物流の人手不足を受けて、2024年5月に「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」と「貨物自動車運送事業法」が改正されました(改正後の法律名は「物資の流通の効率化に関する法律」)。施行は2段階に分かれています。
2025年4月:すべての荷主・物流事業者に努力義務
2025年4月から、荷物を送る荷主、受け取る荷主、トラック・倉庫などの物流事業者のすべてに、物流を効率化する努力義務が課されました。取り組む内容は、次の3つです。
・積載効率の向上(トラック1台に積む荷物を増やす)
・荷待ち時間の短縮
・荷役等にかかる時間の短縮
国が判断の基準を示し、取り組みが不十分な事業者には指導や助言が行われます。
2026年4月:一定規模以上の事業者に中長期計画と定期報告
2026年4月からは、取り扱う量が一定以上の事業者が「特定事業者」に指定され、中長期計画の作成・提出と、取り組み状況の定期報告が義務になりました。国土交通省の資料による指定の基準は次のとおりです。
| 区分 | 基準 | 対象の見込み |
|---|---|---|
| 特定荷主・特定連鎖化事業者 | 取扱貨物の重量が年9万トン以上 | 上位3,200社程度 |
| 特定倉庫業者 | 貨物の保管量が70万トン以上 | 上位70社程度 |
| 特定貨物自動車運送事業者等 | 保有車両台数が150台以上 | 上位790社程度 |
民間では、この施行を指して「物流の2026年問題」と呼ぶこともあります。
大手荷主には物流統括管理者(CLO)の選任義務
特定荷主と特定連鎖化事業者には、物流統括管理者(CLO)を選ぶことも義務付けられました。CLOは、事業運営上の重要な決定に参画する管理的な地位にある人から選ばれ、会社全体として物流の効率化を進める役割を担います。
人手不足は運送会社だけの問題ではなくなった
これまで物流の人手不足は、運送会社や倉庫会社が自社の努力で乗り越える課題と考えられがちでした。法改正によって、荷主も荷待ちや荷役の時間を減らす当事者になりました。
運送会社や倉庫会社にとっては、荷主と一緒に作業の進め方を見直しやすくなった、ということでもあります。人が足りない状況を、採用だけでなく「必要な人数を減らす」方向からも変えていける環境が整ってきています。
物流業界の人手不足への対策
対策は大きく、必要な人数を減らすことと、採用と定着を強めることの2つに分けられます。
必要な人数を減らす:荷待ち・荷役時間の削減
最初に取り組みたいのは、運転以外の時間を減らすことです。トラックの到着時間をあらかじめ予約する受付システムを入れれば、倉庫の前での順番待ちを減らせます。パレットを使って積み下ろしをまとめて行えば、手で荷物を積み替える時間を短くできます。
こうした取り組みは、荷主の協力がなければ進みません。法改正で荷主側にも努力義務が課された今は、話を持ちかけやすい時期です。
未経験者を早く戦力にする:作業の標準化
倉庫の仕事は、経験者のやり方が人によって違うと、新しく入った人が覚えるまでに時間がかかります。作業の手順を写真や動画つきのマニュアルにまとめる、倉庫管理システムで「どこに何があるか」を誰でも分かるようにする、といった標準化を進めると、未経験者でも早く一人前になれます。
経験者だけを採ろうとすると、採用の対象は狭くなります。未経験者を育てられる仕組みがあれば、採用の対象を広げられます。
配車・事務をデジタル化する
配車表の作成や運行の記録、伝票の処理などを紙と電話で回していると、配車担当や事務の人手も足りなくなります。配車の計画を支援するシステムや、伝票の電子化を取り入れると、少ない人数で回せるようになります。ドライバーにとっても、紙の日報を書く手間が減ります。
採用の入口を増やす:求人媒体の外で職場を見せる
求人媒体に求人を出して待つだけでは、もともと物流の仕事に関心がある人にしか届きません。「きつそう」という印象を持っている人に、実際の職場を見てもらう入口が必要です。
近年は、SNSで職場の様子や社員の声を発信し、会社を知ってもらってから応募につなげる会社が増えています。具体的な進め方は運送会社のSNS採用と運送会社のInstagram運用で紹介しています。求人媒体の側で応募が少ないときは、Indeedで応募が来ないときの見直し方も参考になります。
採用にかかる費用を見直したいときは、現場職の採用単価の内訳から整理すると、どこにお金をかけるべきかが見えてきます。
ドライバーの採用は運送業の対策とあわせて考える
ドライバーの採用には、免許取得費用の会社負担、女性や中堅層が働きやすい勤務体系、外国人材の受け入れなど、運送業ならではの打ち手があります。詳しくはドライバー採用が難しい理由と対策と外国人ドライバーの採用で解説しています。
物流業界の人手不足に関するよくある質問
物流業界の人手不足はいつまで続きますか?
ドライバーの高齢化が進んでいることを考えると、短い期間で解消する見込みは低いと考えられます。国の試算でも、対策を取らなければ2030年度に輸送能力が34.1%不足するとされています。採用と、必要な人数を減らす取り組みの両方を、長い目で続けることが求められます。
倉庫スタッフも人手不足ですか?
倉庫作業や荷役を含む運搬従事者の有効求人倍率は1.06倍(令和8年8月分)で、職業全体と同じ水準です。ドライバーの2.54倍と比べると採りやすい職種ですが、夜間・早朝のシフトや繁忙期の増員など、条件に合う人を集める難しさは残ります。
改正物流効率化法の対象は運送会社だけですか?
いいえ。2025年4月からの努力義務は、荷物を送る荷主、受け取る荷主、物流事業者のすべてが対象です。2026年4月からの中長期計画・定期報告の義務は、一定規模以上の荷主、倉庫業者、運送事業者などが対象になります。
まず何から取り組むべきですか?
まず、自社の人手がどこで足りないのかを、職種別に数字で確かめることです。ドライバーなのか、倉庫の作業員なのか、配車や事務なのかによって、打ち手は変わります。そのうえで、荷待ちや荷役のように「減らせる時間」を探し、採用では求人媒体の外にも入口をつくっていきましょう。
まとめ
物流業界の人手不足は、職種によって中身が違います。最新の統計では、ドライバーの有効求人倍率が2.54倍なのに対し、倉庫や荷役の仕事は1.06倍で、職業全体と同じ水準です。一方で、企業が感じる人手不足は、運輸業,郵便業が全産業で最も強くなっています。
2024年4月の時間外労働の上限に続き、2026年4月からは一定規模以上の荷主や物流事業者に中長期計画と定期報告が義務付けられました。荷主も人手不足の当事者になった今、荷待ちや荷役の時間を減らす取り組みと、採用の入口を広げる取り組みを組み合わせていくことが大切です。
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※本記事の統計は、厚生労働省「一般職業紹介状況」令和8年8月分の参考統計表7-1・7-2(常用/パート含む)、厚生労働省「労働経済動向調査」令和8年8月調査、持続可能な物流の実現に向けた検討会「最終取りまとめ」(2023年8月)、厚生労働省「トラック運転者の改善基準告示」、国土交通省「改正物流効率化法を踏まえた取組状況について」に基づきます。
この記事の監修者|堂下 直輝
1994年、兵庫県生まれ。大学卒業後、株式会社マイナビに入社し、支社立ち上げから課長職までを経験。累計500社以上の採用支援に携わる。
2020年、株式会社アップデートを設立し、代表取締役に就任。「仕組みを変え、世界中の課題を解決し続ける」をミッションに掲げ、建設業・運送業・製造業を中心に採用支援事業を展開。
ショート動画やSNSを活用した採用支援を強みに、200を超えるアカウントの運用を支援。採用支援に関する講演活動も積極的に行い、実務と発信の両面から企業の採用課題解決に取り組んでいる。
現在はメガバンクなど金融機関とも提携し、大阪・東京・福岡を拠点に、全国の企業を支援している。